COURAGE Lab

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資金調達2024/02/02

資金調達を加速する!直接金融と間接金融について詳しく解説②

前回、直接金融と間接金融の違いについて説明しました。今回の記事ではもう少し踏み込んだ説明をしていこうと思います。銀行借入と社債発行、どっちが直接金融でしょうか?瞬時に判断ができなかった方はもう一度前回記事を復習してみましょう。 
今回記事では「社債」を主役にしてみたいと思います。  

資金調達を加速する!直接金融と間接金融についてより詳しく解説①

社債について 

「社債とは」と聞かれて正確に回答できる人はなかなかいないのではないでしょうか?ちなみに「債」という漢字には借金というニュアンスが含まれています。 

いきなり話は脱線しますが、国の借金のことを「国債(国際じゃありません)」と呼ぶのを聞いたことがあるでしょう。「国債の発行残高が1000兆円を突破した。日本は借金大国だ!」みたいな記事が新聞やビジネス雑誌等でよく見られます。「日本人は産まれた瞬間に1人あたり1000万円以上の借金を背負っている。」みたいな記事もよく見ます。でもこれは実は正確な表現ではありません。国は誰からお金を借りているのでしょうか?そうです、国民からお金を借りているのです。前回の記事でも触れましたが私達はお金を貸している立場なので、私達1人1人に貸借対照表(バランスシート)が存在すると仮定した場合、貸付金(資産)が1000万以上あるのです!私達個人が借金(負債)を背負っているという表現をする人をみると「あっ!?この人、バランスシートを理解していないな~」と感じます。 

話を戻すと国債と同じ考え方で「会社の借金」だから「社債」となります。これだと銀行借入も会社の借金だから“社債”じゃんと突っ込みたくなります。私も最初そうでした。正確には債券という証書を発行するから「債」という漢字がはいります。(今はテクノロジーが発達して債券は紙では無く電子化されています) 

 

社債の財務会計上の位置づけ 

  • 銀行借入→間接金融
  • 社債発行→直接金融
  • 株式発行→直接金融

今までの記事を読んだ人は上記の区別がすぐに頭に浮かぶはずです。このカテゴリで判断すると社債は株式の仲間と言えます。こんなイメージです。 

しかし財務会計上の括りでいくと違った見方ができます。実は財務会計上、社債は間接金融である銀行借入の仲間になるんです。資金調達に関わる勘定科目は貸借対照表の貸方(右側)で表現されます。最初、借金である負債と純資産がなぜ同じ貸方発生なのかを、私は理解できませんでした。会社がビジネスをする際、元手(お金の源泉)が必要です。お金の源泉情報が貸方に表現されるという理屈で理解すると貸借対照表マスターになれます。実際のイメージを載せます。 

こういう視点でみてみると社債は負債の部に表示されるため同じ負債である借入金の勘定科目の仲間であることが読み取れます。決まった約定日に利息を支払って、借金を償還するというのも銀行借入と一緒の性質です。したがって財務部で働く人の立場でみると実は借入金と似た管理方法をとるのがふさわしいと言えます。その上で直接金融という側面からも管理ができる仕組みも必要になります。 

財務会計の視点で整理してみましょう。こちらの世界だと社債は銀行借入の仲間です。社債はどっちの性質も持ち合わせた中間型の資金調達手段と言えます。 

  • 銀行借入→負債
  • 社債発行→負債
  • 株式発行→純資産

 

社債はどの会社でも発行ができるのか? 

社債について長々と説明をしてきましたが、もしかするとあなたの会社では発行が難しく資金調達の手段として使えないかもしれません・・・。なぜなら社債を発行できるのは一部の信用力のある法人に限られるからです。間接金融というのは与信管理のプロである銀行自身が債権を回収できるかどうかのリスク管理を徹底して、融資判断をします。この債権がちゃんと返済されないことを「不良債権」といい、バブル崩壊以後の日本では連日社会問題になっていたことがあります。ちなみにこの場合の「さいけん」は「債券」ではなく「債権」になります。同じ読み方なのに使い分ける必要があり難しいですよね・・・? 

「この会社には年利3%くらいの利率で3000万くらいまでなら融資してもよいかな」と金融のプロである銀行がジャッジして融資は実行されます。実際はもっと多角度から高度な分析がなされているはずです。 

前回の記事に事例で載せましたが、あなたが100億円もっている大富豪だとして、社債を使って直接金融で融資する場面をもう一度思い浮かべて下さい。この場合、あなたが必ずしも客観的な与信判断をできる金融のプロとは限らないですよね。もしお金だけ持ち逃げされて計画倒産なんてされるリスクがあればとても社債への投資なんてできません。 

ちょっと極端な事例でしたけど、こんな会社に融資することは絶対に避けないといけませんし、そもそもそんな会社に社債発行権があったら社会は大混乱です。 

社債は外部の格付会社から一定のグレードを認定されないと原則発行ができません。さらに第三者目線で客観的な判断をしてくれる格付会社自体も社会的な信用力がないといけません。格付会社といえば下記を押さえておくと良いかもしれません。下記はビジネス記事で頻繁に登場する社会的ステータスが最高レベルの格付調査会社と言えます。 

<日本の格付会社>  
 ・格付投資情報センター(通称:R&I) 
 ・日本格付研究所(通称:JCR) 

<世界的な三大格付会社> 
 ・ムーディーズ 
 ・S&P 
 ・フィッチ 

「AAA」「AA」「BBB」みたいな格付をビジネス記事なんかで見たことがある人も多いでしょう。AがBより格が高くて、さらにAの数が多いと格上ということです。この格の表記は格付会社ごとに異なります。上記で例を示した「AAA」みたいな格付表記はS&P方式の事例になります。この表記の例だとBBB(トリプルB)以上が社債発行する法人には原則求められます。この格付を獲得するのはなかなか至難の業といえるでしょう。これが社債発行をできる会社が限られる大きな理由です。BBB以上の社債なら「投資適格債」と呼ばれ、それ未満は「投機的格付債(ハイ・イールド債)と呼ばれます。もちろん後者は投資家からみてリスクだらけということで、新規発行しても資金を集めることが困難と言えるでしょう。ちなみにBBBとほぼ同格に当たるものはムーディーズ方式だと「Baa」という表記になります。 

銀行のような貸金業務のプロからではなく、社債のように素人(もちろんプロのこともありますが・・・)から資金調達する直接金融の世界では、社会的使命や倫理観がより求められると言えるでしょう。第三者機関から得られる格付を維持する努力義務も当然あります。 

ではどうやったら格付をしてもらえるのでしょうか?基本的に社債を発行する側の法人がお金を格付会社に払うことで調査が実施されます。私は初めてこれを聞いたときに「お金貰ってたら、客観的な判断できないだろ・・・」「お客様の会社に悪い格付とかつけられないだろ・・・」みたいな突っ込みを入れたくなりました。 

しかしここらへんも担保されているらしく、会社と折衝する営業部門と格付を行うアナリスト部門は完全に分離されているらしく、格付に忖度が入り込むことはあり得ないそうです! 

 

次回展望 

次回も社債を主役にして資金調達手段の比較検討をしていこうと思います。多方面から財務周りの知識を得ることができます。社債が発行できる会社にお勤めの方なら「直接金融のみの財務戦略ってどうなんだろう?」みたいな発想が思い浮かぶはずです。そういった切り口で話を展開していこうと思っています。 

記事の中でも触れましたが社債の管理は銀行借入に近いです。クラージュUXのような借入金が管理できるシステムを導入すると借入金と並列で社債情報の整理ができます。また直接金融の借入残高がいくら存在するかといった情報もカンタンにピックアップできますので、システム化すると業務が簡素化します。