COURAGE Lab

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COURAGEUX2024/01/05

資金調達を加速する!発生主義についてより詳しく解説②

前回の記事で「現金主義」と「発生主義」の違いを説明しました。違いがまだ完全に理解出来ていない方は下記の記事を再度読んでしっかり復習しましょう。

資金調達を加速する! 現金主義と発生主義について詳しく解説 ①

今回は、より具体的な実務例を用いて「発生主義」の理解を深めていこうと思います。お金の動きという一面でみる「現金主義」に比べて、「発生主義」の考え方は本当に奥が深いです。「発生主義」の考え方が身についていれば経理関係のステークホルダーとのコミュニケーションが円滑になります。逆に言えば経理関係の仕事をするなら「発生主義」の考え方が身についていないと致命傷です・・・!
この記事は主に企業の若手財務担当をターゲットに書いています。企業の財務担当に抜擢されると銀行からの借入業務等の資金調達の仕事を任される場面が出てくると思います。何となくお金を借りたら銀行に利息を払わないといけないというイメージは大半の人が浮かぶと思います。この利息業務の周辺にも発生主義が登場します。

利息を支払った時の仕訳イメージ

例えば銀行から6億円お金を借りたとしましょう。下記の単純な条件でまずは考えて下さい。実際は毎月借入額を定額で返済するような元金均等返済契約等があり、実務シチュエーションだと実際はもっと複雑になります。しかし考え方さえわかってしまえば、簡単に応用が利くようになります。

  • 会計期間 :1月1日~12月31日(12月決算)
  • 借入日  :7月1日
  • 利息支払日:毎年6月30日に1年分の利息を支払う
  • 借入額  :¥600,000,000(一括で6億円全額を返済する契約)
  • 年利   :1.0%
  • 年間利息額:¥6,000,000
    ※預金口座種別は「当座預金」とする


利息の支払の仕訳をまずは起票します。6月30日に¥6,000,000支払うという情報から仕訳に展開します。支払利息というP/L勘定科目が当座預金の相手科目になります。ここまでは現金主義の考え方と同じで、難しいところは全くありません。

なぜ利息業務で発生主義が採用されるか?

何となく利息については前章の仕訳だけでも事足りてしまいそうに思いますが、少しだけ今回の契約を時系列で整理させて下さい。「月日」だけではなく「年」も加えます。(期末は12月末です)

  • 2023年7月1日に6億円を借りた
  • 2023年12月31日に決算を迎える
  • 2024年6月30日に利息600万円を支払う
  • 2024年12月31日に決算を迎える


単純ですがこんな感じになります。ここで「現金主義」の問題点を考えてみましょう。現金の動きだけで考えてしまうと2023年度の会計期間に支払利息が1円も発生しないのです。2023年の7月以降はお金を借りているんだから、支払行為はなくても支払利息は“発生”していると考えるのが経理の世界では常識です。まさにわかりやすい“発生”主義の事例です。図式化してみるとより理解度が深まります。

お金を払っていないのに2023年度に半年分(年間600万なので1ヶ月分50万)の300万円を支払利息として損益計算書に計上(発生)させる必要があります。
ここで登場するのが「未払●●」「前払●●」のような経過勘定と呼ばれる勘定科目達です。彼らは発生主義界の主役とも呼べる存在です。簿記学習を断念した人にとっては天敵と呼べる存在だと思います。私もお金が動いていないのに仕訳が発生するというのが、最初イメージ出来なかった人間の一人です。今回のケースだと2023年度の期末にこんな仕訳が起票されます。決算書を作成するためにこのように期末に調整仕訳を起票することを「決算整理仕訳」「決算調整仕訳」「決算仕訳」等と呼ぶこともあるので、それも押さえておきましょう。  

未払利息/前払利息の勘定科目属性

支払利息と1文字違いの「未払利息」や「前払利息」で、もう一つ押さえてもらいたいポイントは貸借対照表の勘定科目(B/S科目)ということです。未払利息は負債勘定で前払利息は資産勘定となります。年度の損益計算書を発生ベースで正しく作成するために、貸借対照表の勘定科目が手助けをしているイメージです。
前払利息の場合は先に1年分支払うため、下記の仕訳起票をして半年分の300万を損益計算書から取り除く必要があります。したがって下記の仕訳になります。

私は最初よく理解できず「前払●●」は借方発生で「未払●●」は貸方発生と丸暗記したのを覚えています・・・。でも最初は丸暗記でも良いと思います。あとで理屈が理解できると一気に応用力に繋がるはずです。

洗替仕訳が発生する意味

簿記を少し勉強した人なら「未払●●」や「前払●●」を期末計上して翌期首に洗替仕訳(貸借逆仕訳)を起票するというのを覚えていると思います。これは何のために行うのでしょうか?下記に時系列の利息仕訳を列挙してみました。

2024年の1月1日の仕訳が洗替仕訳になります。6月30日に1年分の利息を支払いますが、この洗替仕訳がないと2024年1月1日~6月30日の半年の時点で1年分の600万が発生してしまいます。しかし洗替仕訳(支払利息のマイナス)があることで半年時点で綺麗に半分の300万が損益計算書に計上される理屈です。(ここらへんは難しいので、理解できなければ何度も読み込んで下さい・・・)
そして前年度と同じく2024年7月~12月分の利息は未払分として、未払利息勘定を使って調整を行うのです。上記の黄色の部分を計算すると「-300万+600万+300万=600万」となり、結果的に1年分の利息である600万が2024年に計上されるのです。

決算業務/財務戦略/税務戦略に関わる管理事項

とりあえず発生主義を実現するためにややこしい複雑なロジックがたくさん登場することは理解できたと思います。もちろん理屈を理解することは大切ですが、実際に決算整理が発生する事項が企業内に山ほどあります。全てを手作業でやっていたら決算書を期限内に作成することは物理上不可能でしょう。
こういった未払利息や前払利息はCOURAGEUXのような財務管理のパッケージ型のクラウドシステムを導入すればボタン1つで集計できてしまいます。正確な会計期間の利息をいつでも把握できることは財務戦略上もとても有益です。
また企業が儲けた利益の中から法人税という税金が課税されますが、この法人税を計算する際の所得計算の際も発生主義ベースの考え方が採用されます。発生主義ベースの数値を決算期以外でもタイムリーに把握できるのは税務戦略上の観点でもとてつもない武器になります。
いろんな場面で発生主義の考え方は役に立つので絶対に理解できるようになりましょう。