COURAGE Lab

COURAGE Lab(クラージュラボ)は法人の財務・経理業務に携わる方にとって、必要な知識や業務の実践方法に関する記事を掲載しています。
貴社の課題解決の一助となれば幸いです。

           
           

資金調達2024/04/15

資金繰りのベストプラクティスを見つけるには?実務に即してわかりやすく解説!①

これから資金繰りについて数回に渡って記事を書こうと思います。インターネットで「資金繰り」というキーワードで検索すれば、たくさんの記事が検索でヒットすると思います。いずれの記事も金融や会計に詳しい専門家によって書かれており、資金繰り表の作成方法等の知見はとても素晴らしいものばかりですが、実際にこれらの記事を読んで資金繰り実務ができると限りません。多くの場合は難しいでしょう。一見ありふれたテーマですが、ちょっと違ったアプローチで私は記事を書いていきたいと思っています。 

生成AIサービスやインターネットで検索すれば、資金繰りノウハウの一般論は簡単に習得できるにも関わらず、世の中に存在する多くの会社の経営者(もしくは経理担当、財務担当)にとって永遠の課題と言えます。資金繰りを簡単に管理できるような業務パッケージソフトウェアは実はほとんどありません。同じお金を管理するような財務会計/管理会計/給与計算/販売管理/仕入在庫管理/固定資産管理等の分野のソフトウェアは多数のシステム会社が開発しており、クラウド型パッケージとして簡単に導入が可能です。なぜ資金繰りのシステムは自社に合致するものがなかなか見つからないのでしょうか? 

資金繰りとは 

冒頭で述べた通りで「資金繰り」というキーワードをセットすれば、インターネット上からたくさんの情報が得られます。おそらく「資金(ほぼ現金預金と認識すればOKです)の増加・減少をコントロールすること」みたいな説明をされているはずです。 

企業にとって資金は、人間にとっての血液みたいな生きていく(存続していく)には欠かせない存在と表現されます。企業が生き残っていくためには、将来の資金の出入り(収入と支出で収支とも言います)を未来予測して行動しないといけません。お金が一時的にでも尽きてしまうと、企業は存続の危機をむかえます。 

ちなみに資金繰りを改善するための方法論も簡単にインターネットで検索できます。下記みたいな方法論がよく書かれています。 

「売上債権の回収サイトを短縮しよう」 

「仕入債務の支払サイトを出来るだけ長くしよう」 

「過剰在庫の存在は資金繰りを悪化させる」 

もちろんこれらも間違ってませんが、資金繰り業務に苦戦している人から見ると「言われなくてそんなこと知っているよ。出来ないから困ってんだよ・・・。」という感想でしょう(笑) 

資金繰りのイメージを掴もう 

資金繰りのイメージを掴むなら、自分自身のお金で考えてみるとよいです。未来予測型の家計簿をつけるイメージです。当たり前ですけど、クレジットカードの引き落とし日に口座にその金額を預入しておかないといけないですよね。そのために収支予測を立てるのです。 

まずは支出のお話からです。年初になると親戚の子供達にお年玉を渡すイベントがあります。いきなり年始めから予測していない手痛い出費が起こったと毎年思うかもしれないですけど、これって親戚の子供の人数や学年を把握しておけば、出費は予めコントロールできますよね。冷暖房をたくさん使用する真夏や真冬の光熱費が通常の月よりも高くなるのも、過去実績から簡単に予測ができるはずです。 

支出だけではなくて収入も同じです。サラリーマンだと収入は会社から貰うお給料になると思いますが、月による変動が少なく大体コントロールは出来ますよね。ボーナス(賞与)も前年実績や今年度の経過業績から近い金額予測はほぼ可能と言えるでしょう。 

ちなみに資金繰りの発想のない人は給料日前に手元資金が尽きてしまい、「3日後の給料日に絶対返すから2万円貸して!」みたいな発言をします。実は企業だとこれは「死」に直結する状態なのです。企業も基本的に銀行からお金を借りますが、銀行はこんなどんぶり勘定の会社に何度もお金を貸してくれません。貸倒れするリスクが高すぎるからです。 

最初に家計簿イメージと言いましたけど、別にレシートを全てとっておいて1円単位まで合わせる必要はありません。食費はおおよそ月3万~4万くらいだ!程度の支出予測でも十分に資金繰りとしての役目を果たします。 

これを企業に当てはめるだけです。簡単ですよね?  

会社の資金繰りが難しい理由 

前章でお話したみたいに資金の収支をちゃんと予測すれば、基本的にはそれが資金繰り業務に繋がるはずです。インターネットで検索して出てくるような立派な資金繰り表が必ずしも必要なわけではありません。ではなぜ企業に置き換えた途端に、資金繰りが大きな課題として立ちはだかるのでしょうか? 

私はマクロな目線で見たときに2つポイントがあると思っています。1つ目は「網羅性」です。私達の家計簿と違い、企業の収入や支出が起こる場面は非常に多岐にわたります。ほとんどの人が、それらについての知識をそもそも網羅できていません。皆さんは会社から給料をもらうはずですけど、給与明細書の詳細を理解している人はそこまで多くないです。天引き(控除)されている「所得税」「住民税」はどのタイミングで会社がお金を国や地方自治体に払っていますか?給与明細書に書かれている「厚生年金」や「健康保険料」はこれとは別に会社負担でさらに納めないといけません。「労災保険」なんかも給与明細書に記載がないですが、会社が納めてくれています。(会社が全額負担するため給与明細書に出てきません) 

簿記を勉強したことがある人や経理/財務の人だと常識かもしれませんが、減価償却費を計上する取引は資金変動が伴いません。というような「企業活動の当たり前」を理解して、それを網羅できないと、そもそもスタートラインにすら立つことができません。 

上記に例を挙げたような事項は経理/財務/総務の知見を借りれば、わりと資金繰り予測が立てやすくそんなに大きな問題にはならないケースが多いかもしれません。 

ちなみにあなたの会社で、下記の支出は何月くらいに行われているか即答できますか?これがわからないということは網羅性が欠如していると言えるでしょう。 

・株主へ支払う配当金 

・法人税の支払 

・固定資産税や償却資産税の支払 

2つ目は「不確実性」です。これは経理部や財務部で働いているお金のプロフェッショナルでもコントロールできない要素が大きいかもしれません。会社の収入にあたる部分の多くは売上によるものだと思います。私も若いころ、売上をあげるために営業マンとして毎日のように必死に商談をこなしてました。その中でまとまりそうな案件があったときに、上司に受注予測時期や予測金額を報告します。受注予測がわかれば検収時期(売上時期)がわかります。売掛金の入金条件を取引先としっかり定めておけば、入金予測も可能です。そうです!この見込報告が資金繰り予測の源泉になります! 

営業職に携わったことがある人なら誰しも経験したことがあるはずですが、決まりかけていた案件が思い通りに受注できないことがたくさんあります。 

・決まりかけていた大口案件で、お客様の稟議が通らなかった 

・コミュニケーションがとれていたお客様の人事異動で風向きが変わる 

・1000万の受注予測が300万へ規模縮小 

・お客様企業の役員の「鶴の一声」で振出しに戻る 

・受注直前で新たな競合他社が現れる 

こんなアクシデントがビジネスの世界では頻繁に起こります。毎日が戦いと言えるでしょう。これが企業の資金繰りに大きな影響を与えるのは言うまでもありません。営業マンは常に月次ノルマやそれを達成するための正確な報告が求められますが、裏側にはこういった背景があります。日々資金繰り状況は刻一刻と変化するのです。 

この「不確実性」をコントロールできないと、見栄えのする立派な資金繰り表を作成しても絵に描いた餅です。本末転倒です! 

時代の流れですが、ITの発達によりサブスクリプションモデルで課金されるビジネスが世の中に増えてきました。やはりこのビジネスの醍醐味は資金繰り予測が立てやすいことでしょう。確実性が高まることで資金繰り業務のハードルが一気に下がります。 

終わりに(次回展望等) 

「会社はどのような状態になると倒産しますか?」と聞かれたら何と答えますか?「長年赤字が累積すると倒産になるんではないですかね~?」みたいな回答をする人が多いですが、答えは資金が尽きたときです!だからこそ資金繰りは全ての会社に求めれる超重要事項なのです。 

2024年現在、倒産件数の増加が社会問題としてニュースで取り上げられます。なぜ経済がストップしていたコロナ渦のときよりも倒産件数が増えているのでしょうか?それはコロナ渦に政府が行ったゼロゼロ融資の影響で、どんなに売り上げが落ち込もうが手元資金が尽きなかったからです。逆に本来存続できなかったと予測される会社が延命だけされてしまったことはゼロゼロ融資の闇の部分と囁かれています。ゼロゼロ融資の返済が開始された途端、手元に資金がなく息詰まる会社がたくさん現れたのは皮肉です・・・。 

というように資金繰りは企業の生命線ということが理解できたと思います。次回は資金繰り業務のシステム化についてお話したいと思います。引き続き読んでいただけますと嬉しいです。