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2025.3.7
COURAGEUX
資金調達
財務コベナンツとは?資金調達リスクを回避する重要ポイントを詳しく解説!

企業が銀行などの金融機関から融資を受ける際、「コベナンツ(誓約条項)」が設定されることがあります。これは、借入企業が一定の義務を負う契約上の取り決めであり、企業の行動を制約することで、貸し手である金融機関のリスクを軽減する目的があります。
コベナンツには、事業譲渡の制限や合併・買収の禁止など、事業運営に関するものも存在しますが、中でも企業の財務状況を維持・改善することを目的とした「財務コベナンツ(財務制限条項)」が重要です。これは、借入企業が一定の財務基準を維持することを求める契約上の取り決めであり、特に無担保融資や大規模な設備資金調達の際に厳しく適用されることが一般的です。
コベナンツを理解し適切に管理することは、企業の資金調達力を高め、金融機関との信頼関係を維持する上で不可欠です。本記事では、財務コベナンツの概要、主要な指標、違反時の影響、企業が取るべき対応策について解説します。
財務コベナンツとは?なぜ重要なのか
財務コベナンツ(Financial Covenants)は、融資契約の中で企業の財務健全性を維持するために設定される条項です。銀行は融資のリスクを管理するために、企業の財務状況を数値化し、一定の基準をクリアすることを求めます。
特に以下のようなケースでは、厳格な財務コベナンツが設定される傾向があります。
• 無担保融資(信用貸付):担保がないため、財務状況の安定性が求められる。
• 大規模な設備投資資金の借入:長期間の返済が必要で、経営の健全性を維持する必要がある。
• レバレッジの高い企業の資金調達:借入比率が高く、財務リスクの管理が重要。
コベナンツは、企業と銀行の双方にとってリスク管理のための指標となり、企業はこれを遵守することで、金融機関からの信頼を確保し、継続的な資金調達の選択肢を広げることができます。
主要な財務コベナンツの種類
(1) 自己資本比率の維持(Equity Ratio)
例:「自己資本比率を30%以上に維持すること」
自己資本比率は、企業の財務健全性を示す指標であり、総資産に対する自己資本の割合を示します。
企業が過度な借入を行わず、財務基盤を安定させることを目的としています。
自己資本比率の低下は、信用力の低下につながり、追加融資が困難になる可能性があります。
(2) 金利負担比率(Interest Coverage Ratio)
例:「EBITDA / 利息支払額が3.0倍以上であること」
企業の営業利益(EBITDA)が、利息の支払いに対してどの程度の余裕を持っているかを示す指標です。
金利負担比率が低すぎると、金融機関は「企業のキャッシュフローが借入金の利息支払いに対して不十分」と判断し、融資リスクが高まると考えます。
(3) 負債比率(Debt to Equity Ratio)
例:「総負債 / 自己資本が2.0倍以下であること」
負債比率は、企業の資本構成を示し、どの程度の借入金に依存しているかを評価する指標です。
高すぎる負債比率は、財務リスクの増大を意味し、銀行は融資条件を厳しくする可能性があります。
(4) 配当制限(Dividend Restrictions)
例:「利益剰余金の50%を超える配当を禁止する」
企業が過剰な株主還元を行うことで、財務基盤が脆弱になることを防ぐための制限です。
特に、資金調達を行いながら高額な配当を実施する企業に対し、銀行は財務安定性を確保する目的で制約を設けることがあります。
(5) キャッシュフローベースのコベナンツ
例:「営業キャッシュフロー / 総負債が10%以上であること」
企業が安定的なキャッシュフローを生み出しているかを評価し、財務健全性を確保する指標です。
キャッシュフローベースのコベナンツは、利益だけでなく実際の現金収支を重視するため、企業の実態に即した指標といえます。
コベナンツ違反のリスクと影響
コベナンツを遵守できなかった場合、企業は以下のような影響を受ける可能性があります。
(1) 繰上げ返済を求められる
コベナンツ違反が発生すると、銀行は企業に対し「即時返済」を求める権利を持つことが一般的です。
特に財務コベナンツ違反の場合、多額の資金返済を求められるリスクがあり、企業の資金繰りに深刻な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 追加融資が困難になる
コベナンツ違反が続くと、銀行は新たな融資を行わなくなり、資金調達の制約につながります。
これは、企業の成長戦略や設備投資計画に影響を及ぼす要因となります。
(3) 信用格付けの低下
コベナンツ違反が発生すると、外部の信用格付け機関による評価が下がり、市場での資金調達コストが上昇するリスクがあります。
信用力の低下は、社債発行や商業手形の割引にも悪影響を及ぼす可能性があります。
企業が取るべき対応策
企業がコベナンツを遵守しながら適切に資金調達を行うためには、以下の対策が有効です。
(1) 事前にコベナンツの緩和交渉を行う
企業の財務状況や将来のキャッシュフローを考慮し、銀行と事前にコベナンツ条件を交渉することが重要です。財務改善計画を提示し、現実的な基準を設定することで、無理なくコベナンツを遵守できるようにすることが理想です。
(2) 財務モニタリングを徹底する
コベナンツ違反を未然に防ぐため、定期的な財務指標のモニタリングを実施し、銀行へのレポートを適切に行うことが求められます。
(3) 万が一の違反時の対応策を準備
もしコベナンツ違反が発生しそうな場合は、銀行と早めに協議し、猶予措置(リスケジュールなど)を求めることが有効です。
まとめ
財務コベナンツは、企業と銀行の間で交わされる重要な財務制約であり、企業の財務管理に大きな影響を与えます。企業はコベナンツの条件を正しく理解し、事前に銀行と交渉することで、資金調達の自由度を高めることが可能です。
今後の資金調達戦略を考える際には、コベナンツが企業の経営戦略にどのような影響を与えるかを十分に理解し、最適な財務戦略を立てることが求められます。