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Courage Lab
2023.12.13
COURAGEUX
資金調達
資金調達を加速する!当座預金について詳しく解説

「当座預金」って何ですか?と聞かれて皆さんは咄嗟に回答できますでしょうか。財務部や経理部に配属される方の大半は簿記検定の勉強をしていると思いますので、新社会人の方でも当座預金という言葉自体は聞いたことがあると思います。私も学生時代に簿記の勉強をしているにも関わらず上手く説明できなかった人間の一人です。私が聞かれて回答出来たのは下記程度の断片的な知識だったのを覚えています。
・当座預金は勘定科目の1つです・・・現金の仲間だから貸借対照表の資産勘定です
・同じ当座という文言が入る当座貸越(当座借越)に関係があります・・・
・小切手の仕訳のときに確か登場したはず・・・
簿記検定等で勉強しただけだと、このくらいの回答は出来るかもしれません。間違ってはないですけど、「普通預金と何か違うの?」って踏み込んだ質問が来ると・・・もうお手上げ状態でしょう。普通預金との比較を中心にわかりやすく当座預金の説明をしていきます。
開設時の審査
皆さんは会社から銀行振込で毎月お給料をもらっていると思います。(現金手渡しの会社もあるかもしれませんが、現代ではほぼ皆無でしょう)給料が振込される皆さんの口座の種別は何でしょうか?おそらくほぼ「普通預金」のはずです。
そもそも私達は個人名義だとほとんどの人が「当座預金」口座は開設することは出来ません。対象者に信用力があるかどうかの審査が必要になるからです。この審査を突破しないと当座預金口座は開設できません。
<審査の例>
・過去の商売の実績(取引実績)
・過去の決算書(業績)
これだけでは無いですが、多角度から信用度をジャッジされて初めて開設できると覚えておきましょう。当座預金を開設しているというのは、それだけでも銀行から客観的な一定水準の評価を与えられるということです。そういった意味でも、ちょっとした社会的ステータスになるのです。まずは「審査が必要」と覚えておこう。
当座貸越(当座借越)
当座預金を開設すると当座貸越サービスを受けることが可能になります。(詳細は下記の当座貸越の記事を参照)
当座貸越は凄い便利なサービスです。手元資金が足りなくなったときに予め決められた限度額内の融資を好きなタイミングで受けることができます。また取引先への支払の決済日に一時的に預金残高が足りないときに自動融資が受けられるサービスでもあるのです。このようにメリットはとても大きいのですが、限度額が信用力や企業規模に応じるという点は注意しましょう。100億の限度額の会社もあれば1000万の限度額の会社もあります。この限度額の枠を算定するためにも詳細な審査が必要という背景があげられます。
ちなみに当座借越も借り手目線から見ただけで、当座貸越と全く同じ意味です。簿記検定とかだと借り手の会社目線なので当座借越という表現が多かった記憶があります。ただ実務面では貸し手側のサービス名の当座貸越(通称:とうがし)という言葉で会話することが多い気がします。
同じく信用力に応じた限度額(極度枠)内で自由に融資が受けられるサービスにコミットメントラインがあります。コミットメントラインと区別する意味で当座貸越のことを「アンコミ」と実務上呼ぶことがあります。(アンコミットメントラインの略)コミットメントラインとの違いもしっかり押さえましょう!
手形/小切手の発行
当座預金開設をすると手形や小切手の発行が可能です。インターネットが発達した現代では時代背景から手形や小切手の活躍の場は縮小傾向にあります。ちなみに手形は2026年に廃止になる予定です。手形の代わりに電子記録債権というサービスが徐々に浸透してきています。全銀電子債権ネットワーク社の「でんさいネット」等のサービスが代表的です。
株式会社全銀電子債権ネットワーク社のホームページ
※全国銀行協会の100%子会社
正確に言うと電子記録債権の場合、当座預金は必須ではなく、普通預金でも使用が可能です。ただこういったサービスの使用も会社の一定の信用力が必要なので、当座預金で運用するケースが多い印象を受けます。
無利息の預金種別
当座預金は無利息の預金種別であると覚えておきましょう。これは無利息でお金が借りられるわけではありません。逆です。当座預金にお金を預けておいても利息がもらえない、という意味です。これは法律(臨時金利調整法)で定められているため、銀行が勝手に利息をつけるようなサービスを行うことができません。
財務部の目線で見た場合は当座預金にお金を眠らせておいても、一切お金が増えないので他の口座にお金を移動させたりして、余剰資金の使い道を戦略的に考えることが重要です。ここまでゼロ金利が続くと社債や株式を含めて、より利回りが期待できる金融商品へ投資するといった意思決定も選択肢の一つです。
預金保険制度上のメリット(ペイオフについて)
利息がもらえない反面、当座預金に預けているお金はその銀行が破綻した場合も全額保護されるというメリットがあります。逆に言うと普通預金は1000万円とその利息しか保護されません。この制度をペイオフと言います。「1000万までしか保護されない」というよりは「1000万までは保護しますよ」のニュアンスかもしれません。
バブル崩壊以降、銀行の破綻は身近な問題で私達個人としても他人事ではありません。日本長期信用銀行(SBI新生銀行の前身)や日本債券信用銀行(あおぞら銀行の前身)の破綻は多くの日本人に衝撃を与えました。この時に預金保護のために公的資金(私達の血税)がたくさん使われています・・・(SBIが新生銀行を敵対買収したときもここらへんは焦点にあげられました)
皆さんも1000万以上の貯金がある場合は別銀行の口座に振り分けて自分のお金を守りましょう。(1000万も持っていないよ・・・という意見も聞こえてきそうです)
同じ銀行に複数口座設けて800万、700万に分けても、名寄せされて1500万と判断されるので気を付けましょう・・・私達が普段使っている普通預金のデメリットは知っておくのが無難です!
財務担当に求められる当座預金の管理
利息がつかない預金となるため、余剰資金を支払決済日以外は別用途で運用するスキルが財務担当に求められます。また便利な当座貸越ですが、残り枠のコントロールが上手くいかないと思わぬ資金ショートリスクが顕在化します。企業の成長に合わせて限度額の枠拡張のための交渉ができるように、銀行との交渉材料のカードを常に持っておく必要あります。
限度額の枠をすぐに把握するためにはクラージュUXのような借入金管理/財務管理システムを導入する選択肢もございます。