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Courage Lab
2025.7.15
COURAGEUX
DSCR(債務償還余裕率)の基礎と実践的活用について詳しく解説!

企業の財務担当者にとって、安定した資金調達と借入金の適切な管理は、経営基盤を支える重要な業務のひとつです。特に、金融機関との関係構築や長期的な財務戦略を考える上で注目されるのが「DSCR(債務償還余裕率)」という指標です。本記事では、DSCRの意味・計算方法・活用場面をわかりやすく解説し、Excelでの実務的な管理方法も紹介します。
DSCRとは何か?
DSCR(Debt Service Coverage Ratio)は、日本語で「債務償還余裕率」と訳され、企業が借入金の元利返済をどれだけ余裕をもって行えるかを示す指標です。
計算式は以下の通り:
DSCR =(営業利益 + 減価償却費)÷(元金返済額 + 支払利息)
この数値が1.0以上であれば、営業キャッシュフローで返済が可能と判断されます。逆に1.0未満であれば、返済能力に懸念があるとされ、外部資金や内部留保での補填が必要になります。
財務管理でDSCRが重要な理由
● 金融機関との信頼構築
銀行は融資判断の際にDSCRを重視します。1.2〜1.5以上のDSCRを求めることが多く、これを下回ると金利が高くなったり、資金調達が難しくなる可能性もあります。
● 借入金戦略の判断材料
複数のローンを抱える企業では、返済計画やリスケジュール判断にDSCRが活用されます。財務の健全性を維持するためには、定期的なモニタリングが必要です。
● 貸付金管理との連携
グループ間や関連会社への貸付金がある場合、資金流出と返済能力の関係を分析する上でも、DSCRの算出は有効です。
ExcelでのDSCR管理方法
Excelを使えば、DSCRの定期算出と推移管理が手軽に行えます。以下は基本的なシート例です。
年度 | 営業利益 | 減価償却費 | 元金返済額 | 支払利息 | DSCR |
2023 | 120,000 | 30,000 | 100,000 | 10,000 | =(B2+C2)/(D2+E2) |
こうした形式で毎月や四半期ごとの財務データを蓄積していくことで、中長期の資金戦略にも活用できます。
DSCRを活用した月次・年次の財務管理ルール
DSCRを有効に運用するためには、以下のようなルール設計が有効です。
【月次管理ルール】
- 月次決算でDSCRを計算し、前月比で変動要因を確認
- 1.0未満になった場合は、原因分析と対策をレポート化
- 金利変更や返済条件変更があった場合は即時反映
【年次管理ルール】
- 年度ごとの推移をグラフ化し、傾向を把握
- 来期以降の3カ年予測を作成し、財務戦略(借入・返済・資金繰り)に組み込む
- 目標DSCR(例:1.2〜1.5)を社内KPIに設定
これらをExcelでテンプレート化することで、属人化せずに組織的な財務管理が実現できます。
DSCRと他の財務指標との併用
DSCRはあくまで「返済余力」を見る指標ですが、単独では不十分な場面もあります。たとえば、不動産業界などでは、LTV(Loan to Value)との併用で担保力と返済能力を同時に分析できます。
また、自己資本比率や営業キャッシュフローマージンなどと合わせて使うことで、より多面的なリスク評価が可能です。DSCRが高くても、資本構成が脆弱な場合は借入増がリスクになるため、複合的な判断が求められます。
まとめ
DSCRは「借入金の返済能力」を可視化する非常に重要な指標です。財務担当者としては、単なる計算式にとどまらず、資金調達戦略・貸付金回収・キャッシュフロー分析など多方面に活用できます。
Excelを活用したルール化と可視化を進めることで、組織としての財務対応力を高めることができます。DSCRを軸とした財務管理、ぜひ今日から始めてみてください。