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2025.5.15
COURAGEUX
資金調達
財務健全性の指標の一つ、ネットD/Eレシオとは?財務担当者が押さえるべきポイントは?

企業の財務健全性を測る指標の一つとして「ネットD/Eレシオ」があります。これは、企業の負債(Debt)と自己資本(Equity)のバランスを示し、特に純粋な負債額に着目した指標です。一般的なD/Eレシオが「有利子負債 ÷ 自己資本」で計算されるのに対し、ネットD/Eレシオでは「有利子負債から現金及び現金同等物を差し引いた純負債」を用いるため、より実態に近い財務状況が把握できます。
ネットD/EレシオとD/Eレシオの違い
D/Eレシオは自己資本に対する有利子負債の比率を示し、企業の財務リスクを表します。ネットD/Eレシオはそこから現預金を差し引いた純負債を用いて、実質的な借入依存度をより正確に示します
指標 | 計算式 | 考慮する要素 | 特徴 |
D/Eレシオ | 有利子負債 ÷ 自己資本 | 有利子負債のみ | シンプルな負債と自己資本のバランスを測る |
ネットD/Eレシオ | (有利子負債 – 現金および現金同等物) ÷ 自己資本 | 純負債(有利子負債から現金等を差し引く) | 流動性の高い資産を控除した実質的な負債水準を評価 |
D/Eレシオについては以下記事をご参照ください。
ネットD/Eレシオの計算式
ネットD/Eレシオ = (有利子負債 - 現金及び現金同等物) ÷ 自己資本
例えば、企業の有利子負債が100億円、現金及び現金同等物が30億円、自己資本が50億円の場合、ネットD/Eレシオは以下のように計算されます。
ネットD/Eレシオ = (100億円 - 30億円) ÷ 50億円
= 70億円 ÷ 50億円
= 1.4
この場合、ネットD/Eレシオは1.4となり、自己資本に対して純負債が1.4倍存在することを意味します。
ネットD/Eレシオの目安
ネットD/Eレシオの適正な水準は業種によって異なりますが、一般的には 1倍以下 が健全とされます。特に製造業や不動産業では1倍を超えることもありますが、逆にIT企業やサービス業では0.5倍以下が望ましい場合もあります。また、銀行の融資判断や投資家の信用評価にも影響するため、この数値が高い場合は注意が必要です。
例えば、製造業では大規模な設備投資が必要なため、借入が多くなる傾向があります。そのためネットD/Eレシオが1を超えても問題とされないことが多いです。一方、IT企業やサービス業は自己資本比率が高く、借入依存度が低いため、0.5倍以下が理想的とされています。
ネットD/Eレシオの活用
企業の財務戦略において、ネットD/Eレシオは資金調達の方針や配当政策の見直し時に重要な指標です。例えば、ネットD/Eレシオが高い場合、借入の返済を優先するか、自己資本の拡充を検討する必要があります。一方で、適正な範囲内であれば、成長投資に積極的に資金を投入する判断も可能です。
また、金融機関との交渉時にネットD/Eレシオは信用度の判断基準として利用されます。特に、自己資本が薄い企業の場合、追加の融資が受けにくくなるため、財務戦略の見直しが求められます。
まとめ
ネットD/Eレシオは、企業の純負債がどれだけ自己資本に対して存在するかを示す重要な財務指標です。適正な管理がなされていない場合、財務リスクの高まりや融資条件の悪化を招く恐れがあります。財務担当者は定期的なチェックを行い、適切な資金調達と資本戦略を維持することが求められます。また、業界特性を考慮し、健全なD/Eバランスを維持することが、長期的な成長につながります。