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Courage Lab
2025.3.27
COURAGEUX
資金調達
ノンリコースローンとは?資金調達戦略における活用とリスク管理

企業の成長を支えるうえで、借入金は重要な資金調達手段のひとつです。特に設備投資やプロジェクトファイナンス、不動産開発など、大規模な資金を要する事業においては、リスクを最小限に抑えながら効果的に資金を調達することが求められます。その中で近年注目されているのが「ノンリコースローン」という手法です。
本記事では、財務戦略の選択肢としてノンリコースローンを検討する企業の財務部門向けに、特徴やメリット・デメリット、導入時の実務ポイントを含めてわかりやすく解説します。
ノンリコースローンとは?
ノンリコースローン(Non-Recourse Loan)とは、借入先企業が返済不能に陥った場合でも、債権者(金融機関)が担保物件の価値以上の返済を請求できないローンのことです。
通常のローン(リコースローン)では、企業が返済不能になった際、担保物件を売却してもなお債務が残っていれば、債権者は企業本体の他の資産やキャッシュフローを使ってでも回収を図ることが可能です。しかし、ノンリコースローンでは担保の価値が全てであり、それ以上の請求は行えません。つまり、企業にとっては「返済責任を担保物件に限定できる借入金」なのです。
ノンリコースローンの仕組みと活用シーン
ノンリコースローンは、特定の事業や資産から生み出されるキャッシュフローを原資に返済される構造となっています。このため、収益不動産を扱う不動産開発事業、エネルギーやインフラといったプロジェクトファイナンス、子会社や特別目的会社(SPC)を活用した分離型投資などで用いられるケースが一般的です。
特に大手企業が複数の事業を展開する中で、ある特定事業のリスクをグループ本体から切り離したい場合に有効です。ノンリコースローンを活用することで、本体のバランスシートに影響を及ぼさずに借入金を調達できるというメリットがあります。
財務戦略上のメリットとデメリット
最大の利点はリスクを担保資産に限定できる点にあります。万が一、対象事業が想定通りに進まなくても、企業全体に対する信用毀損を抑えることができます。また、特別目的会社(SPC)などを利用すれば、オフバランス化によって財務健全性を維持することも可能です。返済は担保資産から生み出されるキャッシュフローを原資とするため、事業単位での採算管理がしやすいという実務的な利点もあります。
一方で、金融機関にとってはリスクが高いため、金利は通常の借入金よりも高めに設定される傾向があります。また、担保物件の収益力に大きく依存することから、審査が厳しく、契約内容も複雑になります。さらに、万が一返済が滞った場合、担保物件を手放すだけで済むとはいえ、プロジェクト自体が終了する可能性もあります。
実務導入のポイント
ノンリコースローンを導入するにあたっては、担保資産の評価と、その資産が将来生み出すキャッシュフローの予測を綿密に行う必要があります。返済スケジュールの妥当性や契約条項(コベナンツ)の内容も慎重に検討し、万が一の事態に備えたリスクシナリオも設計すべきです。また、連結・非連結の判断や、SPCを活用する場合のオフバランス処理、グループ内での保証や支援の有無なども含め、監査法人や税務顧問との連携を図りながら全体設計を行うことが求められます。実務上は法務・会計・税務の三者間での協議を重ね、プロジェクト単位でのファイナンスモデルを精緻に構築することが成功の鍵となります。
まとめ
ノンリコースローンは、単なる借入金手段を超えて、事業単位での資金調達やリスク分散を可能にする戦略的ファイナンスの一つです。特に中長期的に大規模プロジェクトを展開する企業にとっては、柔軟な資本政策と財務健全性を両立させる手段として有効に機能します。もちろん、導入には慎重な審査と設計が必要ですが、正しく活用すれば企業価値の向上や事業拡大への強力な後押しとなるでしょう。資金調達の選択肢として、ノンリコースローンを財務戦略の中に位置づけてみてはいかがでしょうか。