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Courage Lab
2023.7.13
資金調達
手形貸付の特徴について利息支払い時の仕訳と併せてわかりやすく解説

企業が銀行から資金調達する際に短期借入金と長期借入金という2つの選択肢があります。ここでは短期借入金の融資形態の一つである、手形貸付の詳細を説明します。実務上では通称:手貸(てがし)と略されることも多いです。短期借入金と長期借入金の違いについては下記の記事をご参照ください。
長期借入金、短期借入金の違いとは?メリットデメリット、適切なタイミングや状況をわかりやすく解説
短期借入金で一般的に使われる契約形態とは?
短期借入金では一般的に「手形貸付」と「当座貸越(当座借越も同じ意味)」という2つの融資形態で貸付が行われることがほとんどです。この2つの違いをしっかり押さえて、自社の財務戦略にマッチするように使い分けることが重要です。ここでは手形貸付をメインに話を展開したいと思います。
手形貸付の手形とは?
「手形貸付」というキーワードでWeb検索するとおそらく下記のような内容が引っかかると思います。
※銀行宛の約束手形を借入側の企業が振り出して、融資が行われる
※この時、銀行の立場を受取人と呼び、借入企業の立場を振出人と呼ぶ
・・・みたいなことが専門用語を交えて書かれていると思いますが、これだけだと正直イメージが掴み辛いです。下記のような手形用紙を借用証書代わりに発行する融資形態であることを理解しておきましょう。そして手形用紙にどういった情報が記載されているかは出来るだけ大枠を頭に入れましょう。複雑な契約書の締結を省いて手形を使用することで、フットワークのよい融資が受けられることが大きなメリットです。
■手形用紙のイメージ利息支払時の特徴は?
- 受取人・・・お金を貸してくれる金融機関名→ABC銀行(返済時にお金を受け取る立場)
- 振出地住所と振出人・・・借入をする企業の所在地と社名等(お金を借りる立場)
- 金額・・・銀行から借りた金額(5000万円借入/返済するときの記載例)
- 振出日・・・借入実行日(令和5年1月31日に借入実行する場合)
- 支払期日・・・返済する日(令和5年4月30日に返済する場合)
- 収入印紙・・・約束手形は法律で印紙文書に定められているため収入印紙の貼付が必要
手形貸付の利息の支払い方法は原則、前払一括方式になります。これを特徴として押さえておきましょう。前出の手形イメージの場合で利率:2%(年利)と考えると、借入実行時に下記の利息金額が発生するイメージです。
¥50,000,000 × 2% × 90日(1/31~4/30) ÷ 365日 = ¥246,575
別視点から見ると、借入実行時に利息支払が発生してしまうため厳密に言うと、5000万円フルに借りることは出来ないとも言えます。利息が借入総額から差し引かれた金額で口座入金されるため、利息を支払ったという感覚があまり無いかもしれません。
返済時も利息支払が発生しないため、利息単独で支払う場面が無いことも特徴としてあげられます。(例外で分割返済に対応することもあり)財務会計上の仕訳で表現すると次のようになります。
900円のランチを食べるときに手持ちのお金がなく900円を知人から借り、後日お礼(利息)をつけて1000円を返すみたいなシチュエーションが手形貸付のイメージです!(この場合は差額の100円が利息に当たります)
印紙文書としてのポイントは?
手形貸付で使われる約束手形は法律で印紙文書に定められています。借入額に応じて法律で定められた額の収入印紙を貼ることが義務付けられています。印紙税の負担が生じることは一見デメリットのようですが、実はそうではありません。主に長期借入金等で使用される証書貸付と呼ばれる融資形態の場合も契約書に収入印紙を貼付する義務が発生しますが、実はこの印紙税の金額が手形貸付の場合は少額で済むというメリットがあるのです。
下記国税庁のリンクをご覧頂くとわかりますが、同じ5000万円の借入の場合は証書貸付が2万円の印紙税がかかるのに対して、手形貸付の場合は半額の1万円で済むのです。
印紙税額の一覧表
1号:金銭借用証書、金銭消費貸借契約書など
3号:約束手形または為替手形
この印紙税のポイントはよく手形貸付のメリットとしてあげられますが、企業活動全体で見た場合はさほど大きなコストと捉えられることは少ないかもしれません。しかしこういった細かい部分のコストにも気を配るのが企業の財務担当者には求められます。利息以外のコストも意識しましょう。
手形貸付時に求められる財務管理について
手形貸付にて融資を受ける場合に実務上、下記のような管理が必要になります。
①手形貸付、当座貸越、証書貸付の融資形態区分の管理ができる
②利息前払の管理ができる
③管理した数値を財務会計へ仕訳連携できる
④収入印紙代などの付随コストの管理ができる
上記の特徴を取りそろえているCOURAGEUXなどの財務管理システムを導入して、短期借入金のより詳細な内容を見える化することが大切です。